第21章 folder.5
「翔はさ、この先どうしていきたい?」
「え?」
「まあ、このまんま行くと俺が組長になる頃には、翔が若頭ってことになる。でも、別の道もある」
「…どういう…」
「ペーパーカンパニーを本当にカンパニーにしてくって方法もある」
ボンは俺の顔を見ないで、庭の方を眺めてる。
「それが軌道に乗れば、そっちに専念してもらってもいいと思ってる」
「え?どういうこと?」
「だから…表向きは大野の看板から抜けるってこと」
「は…?」
それじゃボンの側に居られないじゃないか。
「やっぱさ…翔はもったいないと思う」
「何言ってるんだよ…」
「ヤクザなんかで終わらせたら、だめだよ…」
「智は…?智はどうするんだよ」
「俺は…もう、逃れられないよ…」
カランとウイスキーのグラスの氷を鳴らした。
「だから翔だけでも…」
「聞けないね。そんな話」
「翔…」
「俺は智の何なんだよ?」
「え…?」
そっと手からグラスを取り上げてベッドに押し倒した。
「智から離れないって、何度言ったらわかる?」
「翔…」
「なんで俺をそんなに堅気に戻したがるんだよ…」
「戻れるやつはっ…戻ったらいいんだ!」
「智…?」