第21章 folder.5
一月もすると、3人は仕事に慣れて新しいことをしたいと言ってきた。
最近流行りの”オレオレ詐欺”だ。
「まあいいがよ…大学生使ってうまいことやれよ?」
「二宮がいいリスト手に入れたんですよ…」
「あ?そんなもんどこで…」
「さあ。でもこのリストね…」
新興宗教の顧客名簿だった。
しかもお布施の額まで載っている。
「年寄りを騙すのは気がひけるけど…こういうのならいいと思うんです。どうせ教祖様が豪遊する金になるんだからよ」
「なるほどなあ…まあ、的は選べよ?」
「わかってますって」
ペロッと紙っぺらをめくっていると、ある名前に目が止まった。
「……二宮は?」
「あれ?さっきまで居たのに…」
ペーパーカンパニーの事務所には二宮の姿はなかった。
「ちっとこの名簿預からせてくれや」
「はい。どのみちまだそれを使うのは先なんで」
夜、大野の家に戻って、自室で名簿を眺めた。
「二宮…か…」
この名簿にある二宮って名前…
偶然とは思えなかった。
二宮の両親は行方がわからないと聞いている。
施設からそのまま組事務所に転がり込んできた二宮は、あまり身の上話はしたがらなかったが、それだけはボンが聞き出していた。
「どうしたもんかな…」