第4章 傷だらけの翼
近藤の兄貴が上座をすっと空けてくれた。
兄貴に目で礼を言うと、俺はそこに座った。
小杉がゴクリと唾を飲み込んだ。
「近藤の叔父貴…」
「智、兄貴だろうが」
東山の兄貴が横から口を挟んで微笑んだ。
「…それでいい。智」
近藤の兄貴も笑う。
「じゃあ遠慮無く。近藤の兄貴。後で姐さんからも話があると思うけど、兄貴には一家を出てもらう」
「は!?」
「別で一家を立ててください」
「何言ってんだよ…おい…東山」
「これは親父が決めたことだ。近藤の兄貴と東山の兄貴には、親父が死んだら別で一家を立ててもらう。もちろん極東翼竜会からは出ることは叶わねえが、喜多川の一家からは離れて貰うことになる」
「なにを…言ってるんだよ…!そんな話聞いたこともねえぞ!」
「俺だって聞いたことねえよ…だけどよ。近藤の兄貴…。俺が総長になっちまったら、俺の舎弟になれるのか?」
「おりゃ、構わねえ」
「え?」
「俺だって構わねえんだぞ?智」
東山の兄貴が俺の方を見る。
「今、おめえは卑屈になることなく俺らの上座に座ってるだろうが。おめえの度胸は、認めてるんだ」
「別に誰が頭だろうが、俺のやるこた変わりねえよ。喜多川への恩がなくなるわけでもなし」