第4章 傷だらけの翼
廊下に出ても聞こえるくらい喚いてる声がだんだん遠くなる。
「東山…」
「はい」
「おめえと近藤は…一家を出ろ」
「…親父!?」
「俺からは以上だ…後は景子と智に任せる…」
「いや…ちょっと待ってくれよ親父!」
姐さんが東山の兄貴を制する。
「総長はお疲れだ。続きは溜まりでやる」
「…はい…姐さん…」
「悪いね。総長の代わりに仕切らせてもらう。今日は智を跡目として正式に養子にしたことと、東山と近藤が一家から離れることを皆に知ってもらうため集まってもらった。以上だ」
兄貴達は半ば呆然としながら座敷を出て行く。
俺と東山の兄貴は、いつもの溜まり部屋に赴いた。
後ろから国分と山口の兄貴もついてくる。
「智…おめえ知ってたのか」
「すいません…つい最近知りました」
「ちっ…俺達の意志はどうでもいいのかよ…」
「東山の叔父貴…いや、兄貴」
「智…」
「俺は、できれば残ってもらいたい。だがよ…兄貴達は俺の舎弟なんかやる器じゃねえよ…一家立てて、上に立つ人だと思う」
「なにいってんだ…俺はそんな器じゃねえよ…」
溜まりの襖を開けると、小杉と近藤の兄貴が座っていた。
「あっ…てめえ、智…」
「総長代理」
「は?」
「今日から総長代理だ。口のきき方、気をつけろ」
そう言って国分の兄貴の顔を見たら、ペロッと舌を出し滑稽な顔をされてしまった。
笑いそうになったじゃねえか…