第20章 folder.4
「ボン、どこで飯にしますか?」
「そうだなあ…」
車の中は、運転席と後部座席だから、さっきの甘い雰囲気は一時飛んで行ってしまう。
外に出ると、あくまでも大野組のボンと下っ端の櫻井だから…
「ホテルでも行くか」
「えっ…?」
そのホテルは港区にあった。
外資系のきらきら輝くホテル。
高校生のころ、よく親父に連れられてこういうとこ来たなあ…
やれ会食だ、やれパーティだとよく連れ出されていた。
あの頃は…自慢の息子だったんだろうな。
俺、外面いいし。
ドアマンに車を預け、ボンをエスコートして中に入る。
「翔…恥ずかしいからエスコートやめて…」
「あ…」
つい、女性を連れてくる時のようにしてしまった。
「申し訳ありません」
「いい…とりあえず、大野組の看板も外してくれ」
「…わかりました」
二人とも一応スーツっぽい恰好をしていたから、なんとかフロントはセーフだった。
ボンをロビーのソファに座らせて、俺が手続きをした。
「ただいまエグゼクティブスイートに空きがございます」
「では、それで。サブルームにエキストラベッドを」
「すぐにご用意いたします」
ダブルの部屋に男二人で泊まるのもおかしな話だから、こうやっていつも偽装している。
どこかのボンとそのお付きの人のお忍びって感じで。