第19章 folder.3
「智も…あるの…?」
「俺…?しょっちゅうだよ…」
そう言って笑いながら俺の手を引いて歩き出した。
表に出たら、相葉の兄貴が気まずそうな顔をして立っていた。
「相葉…すまなかった。もう家戻れ」
ボンがそう声を掛けると、真っ赤になって兄貴は階段を登っていった。
「ああ…悪いことしたな…」
「あああああ…俺、とんでもないことを…!」
「バカ…もういいって…」
「ごめん…智…」
「相葉にはばれちゃったね」
そう言っていたずらっぽく笑った。
「ケツ、気持ちわりいから早く帰ろ?」
クスクス笑う智が、とても綺麗で。
思わず腕を引き寄せた。
「ばか。だめだって」
ぐいっと顔を押されて拒否られた。
「愛してる…智」
「俺も…愛してるよ、翔」
ぎゅっと身体を寄せ合って、俺達は歩いた。
この日から、俺の中で何かが変わった。
何がとははっきりとはわからないけど…
ボンと一緒に生きていきたい。
そして…
守っていきたい…
あの日見た、蒼白の顔…
俺が抱きしめるまで、血の気が戻らなかった。
もうあんな顔させたくなかった。
あんな顔させる前に、俺が全部芽を刈り取ってやる。
そのためには、幹部にならなきゃ…
大野組の幹部になって、この組をコントロールしてやる。
そのためには手段を選ばない。
並み居る幹部を薙ぎ払ってでも、俺は智の傍にいる。
そう心に決めた。