第19章 folder.3
ゴミを出した手を見たら、拳に血がついていた。
それをじっと眺めて、今日あったことを思い出した。
初めてボコボコに人を殴った。
ボクシングを始めて、グローブを着けてプロテクターを着けた人を殴ることはあったけど、素手でむき出しの人間を殴るのは初めてだった。
今更、身体が震えた。
肉の弾ける感触、骨と骨がぶつかる音、血の臭い…
そんなものが思い出されて、総毛立った。
「櫻井?もう、帰るからな。ボンのこと頼むで」
城島さんが声をかけていって、頷いて返事をした。
立ち去る後ろ姿を見ていたら、ボンが上から降りてきた。
階段の裏のゴミ置き場を覗いて、俺の顔を見た。
「翔…終わったなら帰ろ…」
言い終わらない内に腕を取って引っ張った。
「翔っ!?」
壁にボンの身体を叩きつけるように押し付けた。
噛み付くように唇を奪うと、ボンは身を捩って抵抗してきた。
「ちょっ…翔っ…待ってっ…」
振り上げた手を壁に押し付けて、更に唇を貪った。
急激に湧き上がってきたこれがなにかわからなくて、ひたすらボンを貪るしかなかった。
ギンギンになった俺をボンの身体にこすりつけて、これが性欲であることを知った。