第19章 folder.3
ある日、事務所は本家で盃事があるから人手がいなかった。
俺はボンについて事務所に来て、電話番をしていた。
組長がいないときは、ボンが事務所で留守を預かる習慣になっていたからだ。
相葉の兄貴と俺で暇ぶっこいていたら、表が騒がしくなった。
その日は水曜日で、下の不動産屋は休みだった。
「なんだあ?」
相葉の兄貴が窓に近寄った。
「やべ…出入りかもしれない…」
「えっ…」
その瞬間、窓ガラスが割られて何かが事務所に飛び込んできた。
咄嗟に相葉の兄貴を庇って、窓から身体を突き飛ばした。
「なんだ!?」
長部屋からボンが出てきたところで、もう一度窓ガラスからなにか飛び込んできた。
「ボン!出入りだ!」
叫んだ瞬間、窓から飛び込んできたものから煙が出てきた。
腕で口と鼻を覆いながらそれに近づいて、割れた窓からそれを投げ出した。
「ボン!部屋に!」
そう言ってボンを部屋に突き飛ばして、事務所の出口に向かった。
事務所の奥で屯してた叔父貴たちもいきり立って出口に殺到した。
今日は組長が出世するらしく、大野の幹部はみな出払っていた。
それを狙っての襲撃だったのか、相手の人数も極少数だった。