第19章 folder.3
その日からグレる努力をした。
酒もタバコもやるようにした。
もうほとんど成人したと言っていい年だったし、誰も止める者もいない。
ボンの吸ってるタバコや、好きなビールを覚えて、俺もそれを積極的にとりいれた。
周りの若衆さんを見て、チンピラっぽい服装もするようにした。
そんな俺をボンはただ黙って見ていた。
でもある日…
「翔…それ、似合わねーな…」
ぼそっと言った。
その時の俺は、金髪にテロテロの柄シャツ、白のスラックスに革靴という姿だった。
なにがいけないというのか…
周りのもんに舐められないよう必死だった。
相葉の兄貴だって、変な柄シャツ着てるし…
ヤクザやさんにはこれがユニフォームみたいなもんじゃないのか?
幹部でもないのにスーツなんて着られないし…
草彅の叔父貴と慎吾さんは、大野の客分だからスーツ着ててもおかしくはないし…
ヤクザの事務所に出入りしてるのに、渋谷さんみたいな、古着の全身デニムじゃあ都合がわるいだろうし…
やっぱり格好から入ってもだめなのか?
実際に俺はまだヤクザの仕事らしいことはしてなかった。
ボンの身の回りの世話と、金融で儲けてる事以外は…
やっぱりまだ、ボンの懐でゴロゴロしてるだけなのか…