第19章 folder.3
そんなある日、ボンの使いで渋谷さんの店を訪ねた。
22時をすぎると、原宿の道路脇で露天をだしてる。
アクセサリーなんか売ってる。
それは表向きで、若い子相手に乾燥大麻を売りつけてるんだけどね。
麻薬はご法度らしいんだけど、大麻は許されてるらしい。
俺には違いがよくわからなかったけど…
その他にもいろいろと渋谷さんはやってるらしい。
俺が拾われてからは、そんなことの使いっ走りをさせられていた。
でもある日突然、俺は大野組に行くことになったんだけどね…
渋谷さんとこじゃ、給料払えないからって。
「渋谷さん」
「お、翔。元気?」
「ええ。お陰様で」
「へえ…うまいことやっとるみたいやな」
そういってくいっと人差し指を曲げた。
「やめてくださいよ…女なんて引っ掛けてませんから」
「へえ…なら男か?」
「ええ」
きっぱりと答えた俺の顔を、渋谷さんはまじまじと見た。
「へえ…開き直ったんやな。ちょっとの間に…」
「まあ…」
ボンから封筒を預かってたんで、それを渡した。
渋谷さんはそれを隠しもしないで俺の前で確認した。
札が入っていた。
「わかった。ボンには明日には渡せるって伝えといて」
「はあ…それは、なんの金ですか?」
「画材や。大旦那に怒られるから、ボンはこっそり俺に頼むんや」