第4章 傷だらけの翼
玄関の戸が両側に引き開けられると、敷石に革靴を脱ぎ捨てる。
長瀬が俺を先導して、親父の寝ている座敷まで歩く。
「おめえにまだ盃やってないんだけど」
「まあいいだろ?前倒しだよ」
「勝手にきめんな。ボケが」
「あのさ。喜多川から何人か大野に連れて行きたいんだけどいいよね?」
「ああ、いいぜ。お前だって手足いねえと不便だろ」
「ありがと、総長」
「ばか、おめえぶっ殺されんぞ。まだだよ」
「今日から、智兄は総長代理だってよ。姐さんがそう言ってた」
「…あの人は…もう…」
手回しが良すぎる…
もうこうなったら俺を逃さないってことね…
女ってこええなぁ…
座敷に着くと、山口の叔父貴と国分の叔父貴が座っていた。
「おう…智…いや、総長代理」
「やめてくれよ…叔父貴…」
山口の叔父貴は微笑んだ。
「じゃあおめえも、もう叔父貴はやめろ。おめえが大野組を背負った時から、俺達は兄弟なんだからよ…」
「だなあ…あまりにも叔父貴って呼び方が馴染んでたけどよ。おれたちゃ兄弟なんだからよ。智」
「だけどなあ…今更兄貴ってのも…照れてよ…」
「ばあか…」
「ま。後しばらくしかないだろうからよ。俺達のこたぁ兄貴って呼んでくれや。総長代理様」
「言ってらぁ…」
国分の兄貴が障子戸を開けてくれて、俺は中に進んだ。
また、魑魅魍魎が親父の布団の周りを取り囲んでいた。