第18章 folder.2
ボンが長部屋から出てくる頃には、もう夕方になっていた。
「櫻井、帰るぞ」
「はい」
事務所の兄さん方は、ボンに頭を下げて見送ってくれた。
階段を降りながら、ボンは俺に話しかけた。
「お前、なんかしたの?」
「えっ?」
「なんか、皆、感心してたぞ」
「え…俺なんかしたかな?」
ボンはふっと笑って俺を見上げた。
「そういうとこが、いいんだろうな…」
「え…どういうところでしょう…」
全くわけがわからなかった。
「あの捻くれてる連中がそういうんだから、お前ほんとよっぽどだよ」
「すんません…俺、ホントわけわからないんですが…」
階段を降りきって、ビルの前の歩道を歩く。
「お前…堅気に戻る気はねえの?」
「えっ…」
「流されて、この世界来ただけだろ…?ホントはさ…」
ボンの背中が遠くなっていく
「お前はこの世界に居るには、素直すぎるよ…汚れてねえんだよな…」
「なに言って…」
「今ならまだ間に合うぜ…?今なら、制裁無しで戻してやることができる。考えてみろ」
「ボン…」
どんどん、背中が遠くなっていく
嫌だ…嫌だ…俺は…
この人と一緒にいたい
ボンの背中がビルの角を曲がって見えなくなる。
俺は慌てて後を追った。