第18章 folder.2
免許を取ったばかりの俺の運転で、喜多川の本家から辞した。
「櫻井、事務所寄ってくれや」
ボンがそう言うから、大野の組事務所に寄った。
大野の家からは車で15分くらいの場所にあるオンボロビルの中にある。
駐車場に車を停めると、ビルの中に入った。
その雑居ビルはまるごと大野の組で使っている。
表向きの看板は、不動産業だった。
一階にダミーの不動産事務所があって、二階が本物の組事務所だ。
不動産事務所を素通りして、直接二階に上がった。
階段を登っていると、上から相葉の兄貴が降りてきた。
「おう相葉。潤は?」
「ボン!お疲れ様です。あいつは今、学校です」
相葉の兄貴はこの事務所の上に住み込んでる。
俺が大野の家に来るのと入れ違いに、潤もこのビルの一室を与えられて一人暮らしを始めた。
「そうか…来年卒業だったな…」
「はい。成績いいみたいですよ。あいつ」
「へえ…俺達とは地頭が違うんだな…」
「ですな」
おどけた兄貴が事務所の扉を開けた。
「堅気に戻せそうか…?」
ボンの声に、兄貴はちょっと顔を暗くした。
「そうか…」
そのままボンは事務所に入っていった。
兄さん達が口々に挨拶する中を、長部屋に向かって歩いて行く。