第18章 folder.2
「智がこうやって舎弟を紹介してくれるのは初めてだ」
「え…」
「頼んだぞ…智のこと」
そう言って総長は身体を起こした。
「もうやめてよ…総長…」
「守から聞いてるぞ。櫻井が来てから、組の仕事にも気合が入るようになったってなあ」
そう言いながら立ちあがって文机の前に座った。
「智、頼む」
「うん」
ボンは立ちあがって総長の後ろに立った。
「ああ…朱を入れてもいい?」
「頼む」
ボンは文机の傍らにあったカバンを開けると、中から筆やらなんやら出した。
それは朱墨で、どうやら文机に載ってる総長の書に直しを入れているようだ。
「智はね…小学生の時、書道4段まで行ったのよ…」
景子姐さんがこっそりと教えてくれた。
「ひえ…4段…」
小学生の段位とはいえ、大人の初段には相当するだろう。
普段のボンを見ていたら、とてもそうは見えなかったのに…
「勿体無いわよね…続けてればよかったのに…」
中学に上がったら、習い事は一切辞めてしまったということだった。
でも、ここの総長は書に関することは智に聞けやと、一家中に言って回っていたらしく、時々こうやってボンは書の添削に駆り出されていると姐さんは教えてくれた。