第18章 folder.2
「で、総長は俺になんの用なの?」
「さあ…会って話してご覧よ」
重厚な木の扉の前に立つと、姐さんは扉をノックした。
中から男性の声が聞こえて、扉が開いた。
「どうぞ」
確か、小杉という人だ。
喜多川一家の若頭をしている。
ボンも俺も小杉さんに頭を下げると、中に入れてもらった。
「小杉、お前出てろ」
「はい」
おじさんにしては綺麗な顔をしている。
少し白髪の混じった髪をなでつけると頭を下げて出ていった。
そこは総長の書斎だった。
中庭に面した障子戸の前に脇息に凭れて座っていた。
部屋の隅には文机が置いてあって、なにやら墨の匂いがしている。
畳の上に姐さんが座布団を敷いてくれた。
そこに頭を下げて座ると、総長はにっこりと笑った。
「よく来たな。智」
ボンは頭を下げると、俺の顔を見た。
「え?」
「総長、こいつ、俺の舎弟なんだ」
「おお…」
「ホラ、挨拶しろよ。櫻井」
「あっ…はいっ…」
こんな偉い人に会うのは初めてで…
ただのおじいさんに見えたけど、俺は畳に額を擦りつけて挨拶をした。
「ふむ…櫻井か…」
総長は顎に手をやって、俺をじっと見ている。
なんだか冷や汗が背中を流れていった。