第18章 folder.2
「ボケっとしてっと、取って食われるぞ」
ボンが俺の顔を見ながらからかうように笑ってる。
「はあ…すんません…」
玄関を上がると、畳敷きの廊下の奥から着物を着た景子姐さんが現れた。
「姐さん」
ボンは立ちあがって近づいていった。
「智、よく来たね。総長がお待ちだよ」
「うん…あ、こいつ」
そう言って俺を親指で指した。
「新しい俺の舎弟。この前大野に来た時あいさつした?」
「あら…櫻井だったね?あいさつしたわよ」
「へえ…やっぱり抜かりねえのな、お前」
「えっ?」
景子姐さんとボンは俺の顔を見てクスクス笑った。
「え…俺、なんか変でした…?」
この世界に入ってわかったのだが…
やっぱり俺はちょっと変わってるらしい。
礼儀正しいのがヤクザの世界だと思っていたが、俺のはやり過ぎらしい。
「いいや…お前はそのまんまでいておくれよ。櫻井…」
姐さんは笑って俺の頭を撫でてくれる。
「智みたいな子には、あんたみたいなのがぴったりだよ」
「どういう意味だよ」
ボンは少し頬を膨らませた。
「あんたが一番よくわかってんだろう?」
ふふっと笑うと、姐さんは先に立ってあるき始めた。