第17章 folder.1
部屋で横になってると、昨日のことが思い出された。
そうか…昨日、日付が変わった時…
あれは誕生日が来たってことだったんだ。
…それにしても、あんな綺麗な顔してるのに、彼女の一人でもいないんだろうか。
誕生日なのに、家で過ごすって…
年頃の男なら、彼女と過ごすもんだろう?
それともヤクザの世界ってのは、誕生日というものは特別なものじゃないんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えていたら、いつの間にか眠ってしまった。
「櫻井…櫻井…おい、翔!」
びくっと体が跳ねた。
「あ…」
ボンが俺の顔を覗き込んでた。
「お前、平気か?」
「あっ…すいません!ボン、俺っ…」
「いいって。二日酔いだろ?ホラ…」
そう言ってコンビニの袋を投げてよこした。
中には果物たっぷりのゼリーが入ってた。
「それならくえんだろ。後でおかゆでも煮てやるよ」
「えっ…そんな!無理です!」
「あ?」
「ボンにそんなことしてもらったら…」
「バカ。誰かにやらせんよ。俺がやるかボケ」
「あ…そ、そうですよね…スンマセン…」
ぎゅっとコンビニ袋を握ると、ボンは部屋を出ていった。
「あ…ボン…」
誕生日おめでとうございますって…言えなかったな…