第17章 folder.1
死のうと思った。
一度は、死んだ。
親父に殺された。
だけど、気がついたらそこは病院のベッドで。
飛び込んだ川で、たまたま近くを航行していた船に助けられてしまったと聞いた。
警察の人間に、それを聞いた。
親は、病院には顔を見せなかった。
正確には、病室には顔を見せなかった。
きっと医師や受付には顔を見せていたんだろうとは思う。
未成年の親として、官僚として最低限のことはしてたはずだ。
身体が動くようになったら、深夜、病院を脱走した。
また川に飛び込もうとしたけど、その前にこの大野組の下っ端に捕まってしまった。
病院で着せてもらってた変な服で裸足で走ってる俺を、なんだか知らないが拾ってくれた、変わった人がいた。
そのままずるずるとその人の世話になってる内に、大野の家でボンの世話をすることになってしまった。
年が近いから、ちょうどいいだろうってことで…
別に入りたくてはいったわけじゃなく…
ただなんとなく生きてる内に辿り着いてしまった。
それだけだった。
「あ」
「え?」
「0時過ぎたな…」
「はあ…」
部屋にはなんにもなくて。
今日充てがわれたばかりの部屋は、壁掛け時計とベッドが一つあるだけでガランとしてた。