第17章 folder.1
深夜、智さんが部屋にたずねてきた。
「よ。酒でも飲もうや」
そう言って、缶ビールを何本か腕に抱えてた。
「はいっ…ありがとうございます」
「…まあ、そう硬くなんなや…」
「はあ…」
そう言われても、智さんはここのボンなのだから…
やっぱりタメ口なんかきいたらそれこそ、東京湾で丸太を抱えさせられるかもしれない。
そんなことを考えていたら、いつのまにかボンは俺の顔を見て笑っていた。
「は…?なにか…?」
「あんた、すげえ真面目なんだ」
「え?は?」
そんなことはない。
常に親の目を盗んで、どうやったら好みの男とセックスできるかばっかり考えてた不純なやつだった。
まあ…そういう年頃だし…
ほんとだったら、女なんていくらでも寄ってきてたから、俺の青春はそんな女たちで彩られていたんだろうなと思う。
だけど、俺が興奮するのは男で…
小さい頃からおかしいって思ってた。
自分が変なのは早い段階で自覚してた。
だから、周りにバレることなく過ごせたんだけど。
あの日は…
人生で一番の失敗を犯した日だったと、今でも思う。
ふっと顔を上げると、まだボンは俺を見ていた。
「なんですか…?」