第4章 傷だらけの翼
松本に初めてあったのは、中学生の時。
親が大野組の経営する街金で金を借りて、首が回らなくなっていた。
借金の回収という仕事を、俺の親父は俺の初仕事にした。
いやだいやだと暴れる俺を、城島や何人かの若衆が松本の住む家に引きずるように連れて行った。
ヤクザなんかやりたくなかった。
俺は絵を描いているほうがすきなんだ。
初めて見たその現場は凄惨で…
ボコボコに殴られてる松本の親を、正視することができなかった。
でも…
突然リビングの奥の部屋から、裸のおっさんが飛び出していって。
何があるんだろうと不思議に思って覗きこんだら、そこには小さな女の子が寝ていて。
ふわふわのお姫様みたいなドレスを着た、可愛い女の子だと思ったのは、男で。
スカートがまくれ上がっていて、俺と同じものが付いているのが見えた。
その小さな男は、俺を見ると怯えた顔をした。
だけど次の瞬間、俺に縋り付いて泣き始めた。
助けて、と。
小さな声で泣きながら俺に訴えたのだ。
おっさん相手に身体を売らされていたのだ。
俺は、松本の借金を棒引きする代わりに、その小さな男を引き取った。
それが…こんなたくましい男になるなんて…
眠りにおちながら、俺は少し笑ってしまった。
「何笑ってるんですか…」
「…なんでも…ねぇよ…」