第15章 落陽の夢
井ノ原の手紙に書いてあった場所…
初めて来た。
車を降りると砂利を踏みしめた。
杖を付きながら少し歩いて家に近づく。
潮風に吹かれ、綺麗な姿で建っていた。
誰かが手入れしているのか…それとも住んでいるのか…
あたりを見回してみるけど、家以外には何もなかった。
井ノ原が車を降りて、ただ俺を見ていた。
振り返って頷くと、俺は歩き出した。
ゆっくりと家の向こうに回ると、白いデッキが見えた。
そこにはテーブルとイスのセットが置いてある。
暫くそれを眺めてから、また視線を巡らせ俺は歩いた。
宛てどもなく歩く。
家の裏手の崖まで歩くと、少し枯れ草が茂っている。
「あ…」
その中にぽっかりと草の生えていない場所があった。
足を踏ん張って、急いでそこに近づく。
杖が邪魔になって放り出した。
腿を手で抱えるようにして、歩を進める。
そこには、大きな5つの墓碑が地面に埋め込まれていた。
掘ってある文字が少し土に埋もれていた。
跪いて、1つずつ手で土をどけていく。
一つどけるごとに涙が零れた
それまで抑えてきたものが、一気に溢れ出た
「すまねえ…すまねえな…俺だけ生き残って…」
手が痛くて…
それでも土をどけることがやめられない
後から後から零れ落ちる涙は、墓碑の上に黒い染みを何個も作った
拭うこともできない