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翼をもがれた竜【気象系BL小説】

第15章 落陽の夢


「…できるだろうよ…あんたなら…」
『待てよ…本気なのか…』
「本気だ。できないって言うなら、成田の件、洗いざらいマスコミに垂れ込んだっていいんだぜ?」
『おい…』
「……わかってるんだろ…?俺達のこと…」
『総長…』
「…もう総長じゃない」
『え?』
「降りたんだ…俺は…全部降りた。失うものなんてもうない」

また沈黙が来た。
和也が俺の手を握る。

街燈が俺達の手の上を滑るように照らしていく。

『…明日の午後…警護を外す』
「……ありがとう」
『死ぬな』
「…ああ…じゃあな」

通話が切れると、和也の手を握り返した。

「行こう…和也」
「うん…」



もう、戻らない



翔…ありがとう…
あの家は、俺の夢だった



イーゼル…

城島が蹴飛ばして、ちょっと歪んでしまったイーゼル…
あれをリビングに置いて…

そうだ…油絵の具…

一回、チューブを雅紀が踏み潰して…
気が付かないで靴下につけたまんまで家の中歩きまわって…

潤が一生懸命油を染み込ませた布を持って拭いて回ってたな…

あの時の情けない雅紀の顔…

傑作だったな…

翔が怒って雅紀の頭に拳骨を落として…
痛がる雅紀を、仕方ないなあって顔して和也が抱きかかえて。

それを見て、俺は

笑って…笑って…

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