第15章 落陽の夢
「智…」
「ごめん…和也…」
「いい…」
車は都内に向かっていた。
誰も来ないだろうと鍵を車内に置いたままだったから、車を動かすことはできた。
でも、他にはなにもない。
暫く、車窓を流れる風景を眺めていた。
だんだん、頭の影がはっきりと姿を現した。
違う
あれは、翔じゃない
「…戻ろう」
「えっ?」
「今なら大丈夫だろう…」
「でも…」
「…裸足だし。さみーよ…」
そう言うと、和也は笑った。
「わかった」
引き返して、近くに車を停めて家に近づいた。
その頃にはあたりは真っ暗になっていた。
裏の道からそっと伺いながら近づく。
和也と俺は別々に家に近づいた。
思った通り、誰もいなくて。
多分、櫻井を引っ掴んでそのままここを引き上げたに違いない。
SPか…
とにかく櫻井の身辺警護をしている奴らだろう。
あの動き、プロっぽかったから…警察だろう。
すぐ出ないと、連中が戻ってくるかもしれない。
明かりをつけないで荷物を掴んで身支度すると、すぐに俺達は海辺の家を離れた。
和也の運転で再び俺達は都内に引き返した。
途中、遠藤に連絡を入れた。
『…どうした』
「遠藤さんよお…借りを返してもらう」
『え?』
「エネ庁長官についてる警護…あれはお宅の連中か?」
『…なんで』
「やっぱりそうか…」
『おい…総長…』
「一時的にでいい。それを解除できるか」
暫く沈黙があった。
やっぱり…遠藤は知っている。
俺達の事情を全部知ってるんだ。