第4章 傷だらけの翼
涙が止らない。
あの海辺の家に佇む翔の姿が瞼から離れない。
翔の姿が遠くなっていく。
消えていく…
「あ…翔…いやだ…置いていくな…」
ぎゅっと松本は俺の手を掴んだ。
「智さん…俺は今から翔さんになります。あなたを抱くのは翔さんです…」
「松本…」
「あの時、あなたを抱いたのも翔さんです…だから…目を、閉じて…」
松本の手が、俺の瞼に置かれた。
「全て…忘れて…」
熱い唇が俺の首筋に触れた。
「智…」
「あ…あぁ…翔っ…」
「智…愛してるよ…」
夢中でその広い背中に腕を回した。
しがみつくと懐かしい香りがした。
翔のつけていた香水だ…
「翔っ…もうどこにもいかないでっ…」
「…いかないよ…智…ここにいるから…」
「俺のそばにっ…離れないでっ…」
「離さないよ…側に居るから…」
優しく翔の唇が俺の身体を這って行く。
突き上げてくる快感が我慢できず、翔の手をそこに導く。
下着の中に入ってきた手にぎゅっと握られた瞬間、俺は果てた。
「智…こんなに我慢してたの?かわいいね…」
「だって…翔が触ってるんだもん…」
「ふふ…かわいい…智…もっと気持ちよくなろうな…」