第4章 傷だらけの翼
「智さん…」
少し眠っていたらしい。
いつの間にか松本がベッド際に座っていた。
「松本…」
「ここに居て、いいですか…?」
そっと松本の手が俺の髪を撫でた。
「…勝手にしろ…」
「ありがとうございます」
そのままいつまでも松本は俺の傍に居た。
髪を撫でながら、じっと俺を見下ろして。
「眠れませんか…?」
「そんなじっと見られてたら眠れねえよ…」
「すいません…顔が濃いからですかねえ…」
「ちげーわ…バカ…」
松本の手が髪から離れていく。
「あ…」
淋しい…
淋しい…淋しい…
置いていくな…
「…どうしたんです…?智さん…」
松本の手を掴むとぐいっと引き寄せた。
「智さん…?」
「抱けよ…」
「え…」
襟首を掴むと、松本を押し倒した。
「抱けよ!俺のこと抱けよ!」
「智さん…」
松本はそっと俺の頬を撫でた。
俺の涙で手が濡れた。
「わかりました…」
ふっと微笑むと、そのまま身体を起こしてシャツを脱いだ。
左肩から心臓に流れる龍の彫り物が俺を睨んだ。
そのまま背を向けると、スラックスを脱ぎ捨てた。
背中一面に、桜の花びらと愛染明王。
そっと触れて、花びら一つ一つを指で辿る。
背中越しに俺をみた松本は、強い目を向けたまま俺に覆いかぶさってきた。