第14章 啼き竜
「…すまねえな…後のこと、任せていいか?」
「智…おまえ…!」
近藤の叔父貴が後ろを振り返る。
「次期総長には近藤を指名する。東山は副総長。いいな」
「おい…」
「副総長なんて今までなかったが…お前らなら全員納得するだろ」
「待てよ!勝手に…!」
「俺には」
強い声で、遮った。
「やることがある」
近藤も東山の叔父貴も黙りこんだ。
「…それは、喜多川捨ててまでもやることか」
東山の叔父貴の静かな声。
「ああ」
「なんなんだよ。今回の相葉と松本のことが関係しているのか?だったら、それは草彅が…」
「草彅がバラしたのは、頭の悪い操り人形でな」
「え?」
「大野を滅茶苦茶にしたやつ…黒幕が…居るんだ」
「おまえまだ…」
「やらせてくれ…頼む」
ぐいっと東山の叔父貴が総長の襟を掴んだ。
「喜多川の総長だろうが!おまえっ」
「ああ…」
「五千からの手下を捨てるっていうのか!」
「その前に…俺は大野智だ」
「なにを…」
「俺は、総長になるのを何度も拒んだ。…こうなることがわかっていたからだ」
「智…」
「ここまで俺がやれることはやった。親父にも恩を返した…」
そっと叔父貴の手を、総長は外した。
「これ以上は、背負う気はねえ」