第14章 啼き竜
大野…いや、喜多川智の事情ってやつは…
ほとんどを掴んでいる。
総監が…現在の警視総監は…
喜多川の前総長とつながっていた。
俺も最近までは知らなかった。
総監自らが成田の件で、俺に話を振るまでは…
「遠藤さん」
後ろから話しかけられてびくっとした。
振り返ると端正な顔立ちのチビがいた。
「岡田」
「なにしてるんですか…こんなとこで」
「おまえこそ…ああ…警護か」
「ええ…今回はちょっと特務で…」
「SPも大変だなあ…」
「いえ…?そうでもないですよ」
くすっと笑うと、上目遣いに俺を見た。
「佐野さん…曲者でしょう?」
「えっ…?」
「じゃあ、僕、戻りますんで」
小さく頭を下げると、岡田は背を向けて歩き出した。
「…参った…」
佐野の野郎…警備部まで影響力あんのか…
ポケットに携帯をねじ込んで歩き出した。
ボーイに言って車を表に回させた。
特務の連中がうろうろしてるから、さっさと退散するに限る。
部下の回した車に乗り込むと、帝国ホテルを見上げた。
「エネルギー庁長官ねえ…」
「え?なにか?」
「いや、なんでもねえよ」
エネ庁は、扱っているものが他の庁とは性質が異なる。
だから…特務でSPが着くことを極秘裏に認められた。
「いつまでもつかねえ…」
櫻井さんよ…
人間舐めてると、バチが当たるんだよ?
他人様の内臓売っぱらって手にした地位なんて、脆いだろうよ。