第14章 啼き竜
「…まだ、意識は戻らねえのか…?」
暫く、大野は黙った。
『ふたりとも…戻らねえ』
「そうか…戻ってくると…いいな」
『ああ…』
「じゃあ、また連絡する」
『…遠藤さん…』
「なんだ」
『今回の事は貸しにしておいてやるよ…』
「…え?」
『今度は俺のお願い聞いてくれるよな?』
「…待てよ…俺はおまえの…」
『成田のことは…』
一つ、息を吐き出した。
『あんた達の筋書きだろ?』
やっぱり…わかってたか…
「まあなあ…」
『乗ってやったんだ。感謝して貰わねえとな…』
「嵌めるつもりはなかったんだ」
『わかってる…』
くっくと笑う声が聞こえた。
反響して聴こえる。
病院にでもいるのか…
成田にのされた幹部二人は、意識不明の重体で入院している。
だが、事件としては扱われていない。
喜多川の方で極秘裏に動いているからだ。
俺達はその情報をキャッチして…
そして成田の情報を大野に流した。
そう…
利用してやったよ。あいつらの復讐をな。
『また、連絡する』
「ああ…」
電話を切ると、携帯を見つめた。
どこまで…あいつは行くだろう。
櫻井長官の元まで…たどり着くだろうか。