第14章 啼き竜
「なんでだっ…」
長官の手から、新聞が落ちた。
「…どうか、されましたか…?」
床に落ちた新聞を拾い上げると、机に載せた。
「き…君は…部下が死んだというのに…!」
「ですから…成田と懇意にしていた長官に…こうやってご報告に上がったじゃないですか…」
「佐野君っ…!君はっ…」
「もういいじゃありませんか」
「…なんだと?」
「来年には事務次官でしょう?もう描かれたストーリーはかわりないのですから…」
メガネを上げると立ちあがった。
帝国ホテルに来るのは久しぶりのことだった。
成田が殺されたその夜、櫻井長官がここにいることをキャッチした俺は、足を向けた。
案外、すんなりと会ってもらえるものだ。
警視庁公安部部長の肩書も、悪くはないのかもしれない。
「…どこまで…知っている」
背中に苦しそうな声が聞こえた。
振り返ると、胸を押さえてこちらを見ている。
…心臓に爆弾でも抱えてるのか…
「なにを?僕がここに来たという事実だけでは、判断できないのですか?」
ぐっと詰まると、血走った目で俺を見上げた。
「…失礼します」
部屋を出ると、特別につけられたSPに敬礼をして歩き出した。
エネ庁長官の命を狙うやつが居るという情報が入って、特別にSPを配備したそうだ。
「…ばからしい…」