第14章 啼き竜
ホテルを出て近くのコインパーキングに停めた車まで歩く。
冬の寒さが身にしみる。
「あーあ…早くフィリピン行きてえな…」
あの国はいい。
一年中、暖かい。
人は皆バカだし、物価が安い。
あの国なら、ずっと暮らしていける。
だから土地も買ったし、家も建てた。
後は…もう少し金がいる。
あの国の国籍をとって永住するための資金。
死ぬまでもうなにもしなくてもいいくらいの金がいる。
警察の年金なんて、国籍変えたらもらえないんだから…
「もう…面倒くさいな…」
いい加減、櫻井のことも面倒になってきた。
警察内部から俺達の情報が漏れたとなると、なにか動きがあるのかもしれない。
そろそろ佐野のネタでも上げて、更迭してやろうか…
あののらりとした若造が公安部長になってから、やりにくいったらありゃしない。
「…そろそろ潮時かな…」
トレンチコートの前をかけ合わせると、少し急いだ。
やりたいことはやってきた。
たくさん金も掴んだ。
だけど、やっぱり最終的には女だ。
フィリピンには…あいつを連れて行きたい。
ポケットの中にある携帯を握りしめた。
家に帰ったら、電話を入れよう。
あいつは嫌がるけど…
俺はどうしてもあいつを手に入れたい。