第14章 啼き竜
血の匂いが取れない。
なんだか今日はイライラする。
あいつら…あんな必死になりやがって。
なにをあんなにムキになってんだか…
「遺伝なんじゃ…ないの?」
「…え?」
「殺した息子の性癖。あんたからの…」
途端、拳が飛んで来る。
官僚が飛ばす拳だ。
見切っていたけど、おとなしく殴られといた。
「…なにを…ばかなことを…」
「そうかな。案外、的を得てると思うよ」
息を荒くして、櫻井は俺を睨みつける。
「バカなことを云うなっ…!」
また殴ろうとするから今度はその腕を抑えた。
「あのね…痛くないからね?」
「え…?」
「さっきのはサービス。もうこれ以上殴るんだったら…」
ぐいっとネクタイを引き寄せた。
「…殺すからね?」
目を見開く櫻井を床に突き飛ばした。
ちょっとの力なのに、すぐに崩れた。
「…で?なんなの…?俺、そんな話聞きに来たんじゃないんだけど…」
「あ…ああ…」
スーツを払って櫻井は立ちあがった。
足元がふらついてる。
「臓器が要る。中国から連れて来い」
「…今度はなに?」
「心臓だ」
「ふうん…じゃあ手配しとくよ」
「まだ松尾のルートは生きてるのか」
「大丈夫だよ。小杉は死んじゃったらしいけどね」
ガタンと櫻井はよろけて椅子に躓いた。
「え…?」
真っ青な顔を俺に向けた。