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翼をもがれた竜【気象系BL小説】

第14章 啼き竜


「…今思い出しても腹が立つねぇ…」

グラスの氷が溶けてカラリ乾いた音を出した。

「私の息子があんな性癖を持っているなんて…」

櫻井は窓に目を遣ったたまま、グラスを煽った。

「信じられないことだったよ…ま、相手の男は、女みたいに可愛い顔はしていたがね…」
「へえ…」

こんな昔話を聞くのは初めてだった。

帝国ホテルの一室。
呼びだされて、なんの話かと思えば…

くだらない。

「あのね、櫻井さん。俺のことあっちにバラした奴らが居るんだよね…警察内部に」
「ほう…」
「それ、なんとかしてくんねえかな…動きづらくてしょうがないよ」

昼間縛られた手首と足首が痛い。
めちゃくちゃに殴りやがって…あの狂犬野郎…
防ぐのに随分体力使っちゃったよ。
汗をかくのは嫌いなのに。

「公安内部なのか?」
「わかんない。でもそれだけでもなさそうだけどね」
「そこまで突き止めてから話を上げろ。私は無駄は嫌いなんだ」
「ふうん…」

櫻井は窓際のテーブルにグラスを置くとこちらに歩み寄ってきた。
まただよ…気持ちわるいな…

「成田…」
「なに?」

そっと俺の頬に触っていく。
いつもだ。
これ以上の事はしてこない。
できやしないんだ。

この親父…

自分の性癖を認めるのが怖いんだ。
バカだから。

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