第13章 竜王申し
そういうと智は無表情になった。
「もう、あいつに聞くこともねえから、バラす」
立ち上がると、俺の腿を布団越しに撫でた。
「養生してくれ」
黒のトレンチコートの裾をなびかせて、智は部屋を出ていく。
「待て」
智はゆっくりとこちらを見た。
「櫻井の親父はお前にやるから、あいつ俺に殺らせろ」
ガチガチに包帯やらテーピングやら、痛み止めやらして病院を出た。
二宮が俺のこと担いで車まで運んでくれた。
「終わったらすぐ帰すからな」
「…すんません」
智はタバコを燻らせながら、前を見ている。
俺の額からはなんの汗だかわからないが、大量に流れ落ちてる。
寒いはずなのに、汗が止まらなかった。
コートの袖で拭うと、べっとりと汗がついた。
「智…」
「なんだよ、草彅」
「櫻井の親父は、自分の手で息子を殺したそうだ」
少しだけ、智の手が震えた。
だけど、表情は変わらなかった。
「…そうか…」
窓に雨の粒が打ち付けてきた。
冬の冷たい雨…
ぱらぱらという音を聞いていたら、いつの間にか眠っていた。
智に揺り起こされて、ヤサについたことを知ったくらい、深く眠ってしまっていた。
ドアを開けると、二宮が回りこんできてまた支えてくれた。