第13章 竜王申し
急に智が駈け出した。
走った方向をみると、小杉をバラした部屋のドアが開け放たれていた。
雨が急に土砂降りに変わる。
ドアを開けて中に駆け込んだ智を追って、俺と二宮は部屋に入った。
奥の部屋とキッチンの間で、智は佇んでいた。
「智…どうした…」
二宮が俺から腕を外して奥の部屋に駆け込む。
「相葉さんっ…潤っ…」
痛む足を引きずって智に縋る。
奥を見たら、そこには相葉と松本が横たわっていた。
一面、血の海だった
成田はどこにも居なかった。
「しっかりしろっ…」
二宮の声だけが部屋に響く。
俺は動かない智を殴った。
「早く!智っ…」
智はゆらりと動くと、二宮をどけて相葉の身体を抱えた。
抱き上げると、床に血が滴った。
二宮も松本を抱えると、ドアに向かった。
その場で俺は動けなくなった。
なんとか痛む足を抱えてドアまで出ると、二宮に手を振った。
振り返った二宮は頷いて後部座席のドアを閉めると、車の脇に立ったままの智の腕を掴んだ。
智の手には真っ赤な血が付いている。
雨で洗い流すように、手のひらを上に向けて俯いている。
もっと…もっと雨を…
智の手についた血を洗い流してくれ
これ以上、あいつから何を奪う。
竜王よ…もっと、雨を…
【竜王申し END】