第13章 竜王申し
こんな俺でもカッコいいと慎吾は言ってくれた。
こんな俺でもずっとついてきてくれた。
その気持ちに応えることもないまま、慎吾は俺の代わりに死んだ。
死に際、慎吾は俺に携帯を差し出した。
血にまみれた手でその画面に表示されたのは、俺のガキの小学校の入学式の画像だった。
女房と一緒に小洒落た服を着て、ランドセルを背負った姿。
慎吾は密かに、見届けていたのだ。
俺の…家族だったものにまで、慎吾は…
どうしてそこまで慎吾がしたのかわからない。
でも、そこまで人間として惚れられてたら、応えるしかねえだろ…
「…あいつらも…一緒か…」
松本と相葉の顔が浮かんだ。
慎吾に俺に対して愛があったのかはわからない。
だけど、同じなんだろうなと思った。
じゃなきゃ、俺の弾除けになんかなれるはずがない。
自分の組事務所の駐車場に車を停めて外に出る。
ギクリ、足が止まった。
そこに居たのは、ベージュのトレンチコート。
道路を挟んで向かい側から、俺のことじっと見ている。
大通りから少し入った枝道。
人通りも車通も少ない。
ただ俺達の間には、何もない空間があった。
逃げも隠れもできない。