第13章 竜王申し
”親父、俺はどこまでも着いて行きますよ”
春日部を出るとき、慎吾は真剣な目をして言った。
もう、何もかも捨てるつもりだった。
女房や子供はその時手放した。
もう極道に戻るつもりもなかった。
県警に自分の組の解散書を提出したら、そのまま東京に出て、その日暮らしをしていこうと思っていた。
もう俺は極道の世界に疲れ果てていた。
もしかしたら上部組織から、制裁があるかもしれない。
それは組長だった俺が一人で受ければいいこと。
だから身の回りに誰も置くつもりがなかった。
慎吾はずっと俺から離れなかった。
なにもしない俺の面倒をよく見てくれた。
どこからかオンボロアパートを見つけてきて、一緒に暮らすようになった。
一つの弁当をわけあって食べたこともあった。
若い頃から極道の水しか飲んだことのない慎吾は、真っ当に働いたことがなかった。
だけど、山谷で日雇いの仕事を貰ってきてはなんとか働いて、俺に弁当を買ってきてくれた。
半年もそんな生活をしていたら、我が身が情けなくなる。
慎吾に食わせてもらう生活から脱却するため、大野守に連絡をとった。
そこから、俺はなんとか立ち直ることができた。
慎吾はいつも夢みたいに語ってた。
”いつか、親父の組を持ちましょう。親父はやっぱり上に立ってたほうがカッコいいよ”