第13章 竜王申し
「この前教えたことで、俺は手一杯だ。これ以上はだめだ」
「叔父貴…」
相葉が悲しそうな顔をする。
こいつは極道には向いてないくらい、思ってることが顔に出る。
素直なやつ…
だから、そんな奴だから…
遺して行きたいんだろう。
玄関の叩きの上で、俺達は立ち止まったまま。
「俺だってわかってんだ…だけど、やっぱり…」
口元を袖で拭うと相葉は外に視線を移した。
「何がしあわせなんだと思います…?復讐を果たして、半身である愛する者が居ないまま生きながらえていくのと…」
ちらり、目だけ俺に向けた。
「愛した者の後を追うのと」
答えることはできなかった。
殺した後…
そんなこと考えてない。
慎吾の仇を討つことばかり考えている。
後のことは、瑣末なことなんだ。
極道やめてどっかでのたれ死んでもいい。
サツに捕まって服役してもいい。
とにかく、慎吾が殺されたことに対する復讐ができればいいんだ。
なにも答えず、車に乗り込んだ。
ハンドルに手を掛けると、宛もないことにきづいた。
岡田から情報が上がってくるまで待ってることなんてできない。
動き出した歯車は止めることなんてできないんだ。
ギアをドライブにいれ、アクセルを踏み込んだ。