第13章 竜王申し
楽しそうに、智はどこかを見てる。
そんな智を二宮は少しだけ微笑んで見つめてる。
普通なら、殺気立ってる。
付け狙ってる相手に舐めた真似されたんだ。
なのに、智は笑ってる。
まるで楽しんでるように…
そんな姿を見てたら、入っていた力が抜けてきた。
成田と対峙した恐怖が薄れていくようだった。
そうだ。
命なんかとっくに捨ててる。
だから余計なものは背負い込まないようにしてきたんだ。
なにを怖がる必要がある。
…智も、そんな心境なのか…
「成田のしっぽ掴まえたら、知らせます」
「ああ。今度こそ頼むぞ」
「はい」
長部屋を出ると、相葉と松本が待ち構えてた。
ふたりとも言いたいことがあるような顔して、こっちを見てる。
「なんだ…」
「なにかあったんですか?」
「いや、別に」
「叔父貴…隠さないでください」
相葉が怖い顔をする。
智がだめなら、俺かよ…
事務所のデスクの間を抜けながら正面の玄関へ歩いて行くと、二人はついてくる。
…本当に離れねえつもりだな…
「あーのーなー…」
「すんません…でも、総長は絶対に言ってくれないから」
「わかってんなら嗅ぎ回んな」
「…そういうわけにはいかないって、この前言ったでしょう…?」
松本がぽつりとつぶやいた。