第13章 竜王申し
あれは…人間じゃない
「なんで言わねえんだ…」
「すいません…」
東京に戻ってすぐに総長に会いに行った。
喜多川の長部屋で、ソファにゆったりと総長は座っていた。
「遠藤が…言ってた妖怪…」
「ん?」
「成田が一番厄介な妖怪かもしれない」
「ふ…」
口元に指を当てると、総長は少し笑った。
その目はどこかをしっかりと見ている。
「草彅がそう思うくらいなら…やっぱり俺が感じたのも間違っちゃいねえな…」
ひとりごちるとタバコを手に取った。
後ろに立ってる二宮が火を着けた。
「俺は、あいつと目を離したら殺られると思った」
ふうっと紫煙を吐き出すと、にやりと笑う。
こんな時に…笑ったんだ…
「…その成田を顎で使ってる櫻井…」
「ええ…」
「バケモンなんだろうな」
灰をクリスタルの灰皿に落とすと、暫くまた燻らせている。
「総長…」
「やっぱり、最後の壁は高えな…」
日本の中枢に巣食ってる虫ケラ。
遠藤はそう言った。
自分の息子を…出世のために殺す虫ケラ。
俺たちは思ったよりも、高い壁に向かっているのかもしれない。
「ま、今日は仕方ねえさ。次は逃さねえようにな」
「はい」