第13章 竜王申し
「な、何いってんですか!?」
「いや…本家に残ってたら、こんな小さい組にいるより上、行けただろうからな…」
「組長…俺はそんなこと思ったことありませんよ」
井ノ原は突然俺の舎弟になることになっても、文句の一つも言わなかった。
それどころか、喜多川の仕事に邁進する俺を支えて、組をよく盛り立ててくれてる。
小さな組でもそれを維持していくのは大変なことで…
喜多川への上納金も、井ノ原が工面している。
「朝香と一緒に、この組を盛り立ててくれ…」
「え?」
「…そういえば。おまえ、今年45歳だったな」
「え?ええ…なんです、突然…」
「慎吾と、同じ年なんだな…」
「え…?」
慎吾が生きていれば…
井ノ原のように結婚して、子供も持っていたのだろうか…
「なんでもねえ」
「組長、もしかして…」
「ああ。俺はこれから弔い始めるからよ。わりいが、後は頼む」
井ノ原には、ある程度話してある。
これから俺がしようとしていることも…
こいつは信用がおけると思ったから話せた。
「わかりました…組長…あの…」
「ん?」
「希子さん…」
「ああ…今朝、別れてきた」
「えっ…だって…」
「わかってるよ…だけど、どうにもならねえだろうが…」