• テキストサイズ

翼をもがれた竜【気象系BL小説】

第13章 竜王申し


組事務所に顔を出すと、井ノ原がキリキリと働いていた。

「おい…朝から何張り切ってんだ…」
「あっ…組長!誰のせいだと!」
「すまねえって…」

俺が組事務所にほとんど顔を出さないから、組のことはすべて若頭である井ノ原が仕切ってる。
こいつの負担になってるのはわかってるが、俺に何かあったら組を継ぐように言ってあるから、あまり気にしてはなかった。

「井ノ原ちょっと」

一瞬俺に軽口を叩こうとしたが、すぐに真顔になって長部屋に入ってきた。

今の俺の組は、もともと小杉のシマだった。
そこにある雑居ビルを買い取って、そこをまるごと組事務所にした。
1階にあるテナントは、井ノ原の女房にブティックをさせている。

「なんでしょう」

部屋の奥のデスクの椅子に深く腰掛けて井ノ原を見つめる。

「ああ。このビルの一部屋、俺にくれたよな」
「ええ。いつでも住めるようにしてあります」
「今日からそこに入るから」
「えっ。組の仕事に精だしてもらえるんですか?」
「いや…」

タバコを咥えると、火を着けた。

「あんな、井ノ原」
「…なんですか…」
「おまえを本家(喜多川のこと)から貰い受けたのは、申し訳なかったと思ってる…」

/ 541ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp