第13章 竜王申し
株の売買で増やした、前の組の金。
それを希子に託した。
今の組で着実に増やしつつある資産は、俺の懐にある。
「智よ…」
「なんだよ。叔父貴…」
ここに居ると、昔に戻る瞬間があって。
こいつは総長でもないし、俺は喜多川の手下でもない。
昔のまま…
「前に言ってたろ…相葉と松本を頼むって…」
「ああ…」
「俺は無理だからな?」
相葉と松本が、慎吾みたいに智を慕ってるのは知ってる。
だから智は遺していきたい。
きっと、これから先は血塗られた道になるのだから。
そんな修羅場にあいつらを巻き込みたくないんだろう。
「…あんたに翔のデータを見せた時点で…もう諦めてる」
そう言って智は微笑んだ。
ここにきて…
智は強くなった。
折れそうになる直前で靭やかに立ちあがって笑ってる。
纏っている雰囲気も変わった。
甘えたような空気はどこかに行ってしまって、ずっしりと地に足がついてる。
時々見せる眼光は、俺でさえ震えが来る。
総長の看板がそうさせているのか…
次々にわかってくる、こいつにとって残酷な現実がそうさせているのか…
「なら、良かった…」
「だから懲罰委員長の任を解いたんだ。気が済むまで、やろう」