第4章 傷だらけの翼
「姐さん、城島とばっかり喋ってないで俺の相手もしてよ」
そう言うと姐さんは笑い転げた。
「いい子だ、智。じゃあね城島」
姐さんは艶然と微笑むと、俺の部屋に入ってきた。
相葉が茶を持って後をついてくる。
「ああ、ありがとう相葉」
相葉は頭を下げるとテーブルに茶を置いた。
「姐さん、今日はどうしたんだ?」
革張りのソファの向かいに腰掛けながらいうと、姐さんはカバンから書類を取り出した。
「あんたと総長の養子縁組、準備が整ったよ」
「そっか…」
「アンタに喜多川の財産は全て相続してもらうから」
「えっ」
「私は何も貰うつもりはないから」
「姐さん、そりゃいけねえよ」
姐さんは少し笑うと、カバンからタバコを取り出した。
俺が火をつけようとするといつも怒るから、相葉に火を着けさせた。
ふぅと紫煙を吐き出すと、姐さんはまた笑った。
「アタシはね…別に表の世界にしゃしゃり出る気はないんだ。このままどこか山奥でひっそり暮らしていければ…」
どこかで…ひっそりと暮らしていく…
「あっ…!?」
「組長っ…!」
「智!?」
頭が急に締め付けられたみたいに痛くなる。
「なんでもねえ…」
「だめです!組長!横になって下さい!」
「構うな…」
相葉と姐さんの声が、遠くなっていくのを感じた。