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翼をもがれた竜【気象系BL小説】

第12章 竜飛


翔の日記以外、俺達は全てに目を通した。

USBに入っていた成田のデータも合わせると膨大な量で…
見終わったのは深夜になっていた。

「…なにか、食うか…」

草彅がつぶやくけど疲労困憊していて、食欲もなかった。

「食わないと、だめだ。なんか用意させるから」

そう言うと翔の部屋を出て行った。

なにも、したくなかった。

和也は俺の隣に椅子を持ってきて座っていた。
俺の手を握りながら、じっとパソコンを眺めている。

「智…」
「ん…?」
「行こう…?」
「ああ…」

和也は立ち上がると俺の手を引いた。
背中を向けると歩き出した。

「俺は…」

ドアを開けながら、呟く。

「俺はどこまでも智についていくよ」




和也ぃ…



俺はどこに立っているんだ



現実感のないまま和也に手を引かれて廊下を歩く。
リビングの扉を開けたら、中に入れられソファに座らされた。

カーテンの引かれた薄暗い部屋…

ここに、翔は居た
確かに居たんだ

痕跡が…あんなデータだけなんて…



「違う…」


翔の居た痕跡…




それは、心の中にある。




「智…?」
「ああ…」

ぎゅっと和也が手を握る。

「大丈夫…大丈夫だ」

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