第12章 竜飛
「そうだな…」
和也の手を解くと、ノートパソコンを手にとった。
「翔の…部屋に行く」
「智…」
「一人にしてくれないか」
「…わかった」
「リビングに草彅が居る。一緒に待っててくれ」
和也は俺の顔を引き寄せて一つ、キスを落とした。
「いつでも…俺の名前を呼んで」
「わかった…」
一緒に寝室を出ると、俺はまっすぐに翔の部屋へ行った。
ドアを開けると何も変わらない部屋…
シーツすら変えていない。
時々俺一人がここに入って掃除したりする以外は、誰もこの部屋には入っていない。
窓を少し開けて、外気を入れた。
少しだけ部屋の温度が下がる。
寒くてたまらないが、今はなぜか温まりたくなかった。
指先を息で温めながら窓を閉めた。
翔の使っていたパソコンのあった跡。
そこにノートパソコンを置く。
コードを繋いで電源を入れる。
懐かしい起動音が聴こえると、画面が浮かび上がった。
パスワードも入れることなく、そのまま開いた窓。
フォルダが幾つか並んでいる。
シゲがわかりやすく内容をタイトルに入れてくれている。
経産省のファイルから開けた。
そこには名簿とか派閥争い、ハッキングした内部資料なんかが突っ込んであった。