第12章 竜飛
「よ、顔拝めたか?」
後部座席に乗り込んできた遠藤は寒そうに手を擦り合わせた。
「ああ…ありがとう。不気味な奴だな」
「やっぱりそう思うか?」
「ああ…ああいうのが一番こええよ」
「だよな…腹の底から、人間舐めきってるやな」
ちらりと遠藤は草彅を見た。
「大丈夫だ。こいつは口が硬い」
「そうか…」
「聞きたいことがある」
「なんだ」
「外事に…一課だ。山下ってやつはいるか」
「ああ…なんで知ってる」
「そいつはあんた側か」
ぐっと遠藤は黙った。
「ふ…いいよ。答えなくて」
「総長よ…なに掴んでんだ」
「いや…とりあえず、成田にお願いできる方法を探してるだけだ」
「シャブのルートなら…」
「こっちからお断りしたいんだよ。わかるだろ?」
遠藤が身動ぎする音だけ聞こえた。
「総長よ…」
「なんだ」
「あいつを掘り返したら、ざっくざくに妖怪がゲットできる」
「俺はゲームはやらない主義でね」
「ばあか。集めるゲームじゃねえよ」
「こええよ、そんなゲーム…」
「だろ?俺だって勘弁だぜ。…だがよ。その妖怪は日本の中枢に巣食ってる虫ケラだったらどうするよ」
「…さあ…」
「命がいくつあっても足りねーぞ…」