第12章 竜飛
「ごーいんだねえ…」
草彅のダークブルーの車が劇場の前に横付けされた。
助手席の扉を開けて乗り込むと、草彅はびっくりした顔をした。
「総長…後ろ…」
「いい。霞が関の桜田門行け」
「はい?なんでまた」
「遠藤から呼び出しだ」
「…なんて?」
「成田のツラ拝ませてくれるってよ」
「さっき見たんじゃ…ていうか、総長は会ってるんでしょう?」
「まあ、いい。それに遠藤に山下のこと確認したい」
「ああ、なる…」
首都高に向けて、草彅は車を走らせた。
「なあ…山下はなんで俺達のこと嗅ぎつけたんだ?」
「さあ。成田を嗅ぎまわってるってバレたんでしょうね」
「だから、成田の方から現れたのか」
「ですね」
「外事一課にバレてて、二課が嗅ぎつけないわけねえもんな」
「でしょうね」
「俺達の行動は筒抜けか…」
「まあ、それもある意味逆手に取れますがね」
「まあな」
ぎりっと爪を噛む。
と、いうことは翔の父親にも俺たちの行動は筒抜けってわけだ…
「近いうちにお会いできるかな…」
「…誰に?」
「エネ庁のトップだよ」
「ああ…」
くすっと笑うと、草彅は楽しそうな顔をした。
「必ずお会いできるでしょうね。しかも、向こうさんからね」
確信のある言い方だった。