第12章 竜飛
「で…?あんた、成田と敵対してるって聞いたが…」
「ああ。あまり時間がないから手短に言う」
山下は壁に立てかけてあるパイプ椅子を取ると開いて腰掛けた。
ここは座席は固定ではなく、パイプ椅子を並べて客席を作るようだ。
パンチの引いてある床にコツコツとかかとをつけて山下はなにやら思案顔をしている。
「…もともと一課と二課は仲がよくない。でもって、成田。あいつは外事の特権フル活用で、イケナイことばかりしやがる…」
「なんで放置してんだよ。櫻井か」
「…よく知ってんね」
まだ、翔のデータには手を付けていない。
昨夜は怖くて見れなかった。
俺の部屋に置いてある。
「俺は、正義の味方ってわけじゃねえよ。だけどね。もうキレそうなんだよね…あんなの居るとさ、佐野さんに迷惑かかんだよね…」
「佐野さん?」
「公安部長だよ」
「へえ…」
草彅は黙って壁に凭れている。
山下は俺の事を下から上まで眺めると、目を細めた。
「あんた。信用できそうだね」
「…そう簡単に決めていいのかよ」
「俺、人を見る目と時流を見る目は確かだから」
そう言って山下は懐からスマホを取り出した。
「これ覚えて」
そう言って俺に画像を見せた。
それは新宿で見た男だった。
「え…?これ…」
「これが成田だよ」
「えっ…」
あっちの方から出てきてた…!