第12章 竜飛
次の日、草彅から連絡があって事務所の外へ呼びだされた。
一人で来いという。
遠藤みたいなことを言うなと思って、二宮を事務所に置いて出てきた。
「総長、こっちだ」
池袋駅にほど近い公園。
少し薄暗い。
すいすいと草彅は歩いて行く。
「なんだよ」
「公安の奴に引き合わせます」
「え…」
「今日しかありませんでした」
「そうか」
公園を突っ切ると裏通りに出る。
暫く歩くと墓なんかがあって、寺かな…
歩いて行くと劇場があった。
小さな劇場。
左側にある細い通路に入っていった。
右手にあるドアを開くと、もう一つ防音扉があって中に入るとそこは小さな劇場になっていた。
舞台に一人、男が立っていた。
「待たせた」
草彅が声を掛けると、男は振り向いた。
華やかな男…
少し長めの髪を揺らして俺を見つめた。
「どーも。外事一課の山下と言います」
案外、軽いノリで力が抜けた。
「どうも…」
さっと山下はしゃがみこむと、手を出して握手を求めてきた。
「あんた…上から失礼だろうが」
「あ、失礼」
ひらりと舞台から飛び降りた。
「さすがジャパニーズマフィアだね」
キザ…
なんだこいつ…
「もういいだろうが。山下さんよ」
草彅が割って入った。