第4章 傷だらけの翼
そう言うと、草彅の叔父貴は微笑みながら外を見た。
「慎吾の野郎を殺られたことは忘れねえ」
草彅の叔父貴は元々は別の場所で組を張っていた。
しかし、その地での抗争が激化して、一家は解散書を提出させられて壊滅した。
叔父貴は行き場を無くし、旧知だった俺の親父に助けを求めてきた。
以来、客分として草彅の叔父貴は大野組に居る。
その時連れてきたのが、慎吾さんだった。
たった一人残った舎弟を、草彅の叔父貴はそれは大事にしていた。
俺も年が近いこともあって、慎吾さんには懐いていた。
その慎吾さんは、前の抗争で死んだ。
草彅の叔父貴の弾除けになったのだ。
「お前に真実を聞くまでは、しょうがねえことだと思っていたがな…だがな、あの野郎だけは、許せねえんだよ…」
そう言うとタバコを取り出した。
ライターを差し出すと、顔を近づけた。
火をつけるとすうっと一息吸って離れていった。
「喜多川の親父には俺は仁義はねえが、アンタんとこには仁義がある。だから、俺も喜多川に付いて行っていいか?」
「叔父貴…」
「俺にも、盃くれよ。智」
時間は刻々と過ぎていく。
親父の容体は相変わらずだった。
事態は動くことのないまま、時だけが過ぎていった。